280MHzデジタル同報無線システム
屋外拡声子局
280MHz屋外拡声子局の特徴
- 屋外放送が明瞭で聞き取り易くなるため「うるさい」、「聞き取れない」という苦情が減ります。
- 音声合成だとは気づかれないほど自然なアナウンスです。肉声放送に比べて聞き取り易くなります。
- 文字を受信した受信機(屋外拡声子局や戸別受信機)側で音声合成しますので、音質の劣化(※)が起きません。
※音を電波で伝送するために不可逆性圧縮することで劣化する。
- 280MHzシステムでは音声が高品質のため、高性能スピーカの価格に見合った効果が得られます。
屋外拡声子局の整備単価
- 60MHz防災行政無線から280MHzへ転換する方法には3種類あります。
- 最も廉価な方法は「居抜き方式」と呼ばれるもので受信機とアンプだけを交換するというものです。スピーカや鋼管柱だけでなく、ケーブルやアンテナ、バッテリー、ボックスと利用できるものは何でも流用します。整備単価は約150万円(税別)です。整備後7年以内であれば「居抜き方式」が可能です。
- 次に、既設鋼管柱とスピーカだけ流用する方法です。整備単価は約270万円(税別)です。
- 3番目は、既設の屋外拡声子局は全て撤去・廃棄のうえ建て替え新設するものです。整備単価は約480万円(税別)です。
屋外拡声子局の更新に係る財政措置
- かつては60MHzアナログを60MHzデジタルに更新するのに緊急防災・減災事業債(緊防債)が活用されました。
- その後、新たな防災無線(280MHzシステムなど)での整備にも緊防債が利用されるようになりました。
- しかし、60MHzデジタル(16QAM)を60MHzデジタル(16QAMやQPSK)で更新する場合に緊防債が使えるのかはっきりしていませんでした。
- 令和3年にこの点が明らかになりました。緊防債は「防災機能の強化」に対しての財政措置であることから、単純更新の場合に利用できるのは防災対策事業債(充当率75%、交付税参入率30%)とされました。
- 更新にあたっては、「単純更新」か「防災機能の強化」かで自治体の財政負担は大きく変わります。
肉声マイク放送の問題点
- 60MHz防災行政無線の屋外放送が聞き取りにくい原因は2つあります。
- ひとつは、肉声マイク放送です。特に男性の肉声放送は屋外放送に向きません。
- ふたつめは、音声を電波にのせるという仕組みだからです。
【解説】
- 一般に、60MHzアナログから60MHzデジタルに転換すると屋外拡声放送の音達域が狭まるだけでなく聞き取りにくくもなります。
- 理由は、仕様上の60MHzデジタルのデータ伝送速度が十分でないからです。(デジタル化による音質劣化現象)
- 伝送速度は、16QAMでは45,000bps、QPSKで11,250bpsとなっています。(bps:1秒間のデータ量)
- デジタルでは、音質はデータ速度に比例し、受信感度は反比例します。音質の面では16QAMの方がQPSKナローより良く、受信感度はその逆となります。音質と受信感度は両立しません。
- 280MHzデジタルのデータ速度は1,200bpsとあり得ないくらい遅いです。だから抜群の受信感度が得られているのですが、音質を全く犠牲にしていません。
- こういうことが実現できているのは、280MHzシステムが「音声通信」ではなく「文字通信」だからです。音声合成するのは文字を受信した受信機なので音質劣化が起きないのです。
- この論理からすると、「聞き取りにくい」「受信しにくい」とう防災機能上の問題点は、防災行政無線が「音声通信」であるという点にあることが見えてきます。
- すなわち、肉声マイク放送が可能であるがゆえに、「屋外放送が聞き取りにくい」「戸別受信機が受信しにくく屋外アンテナ工事を要する」という防災機能面と財政面の両方で軋みがでてきていると言えます。